読書記録「千歳ヲチコチ」

 

 

漫画単行本は全8巻で完結済みの、平安時代を舞台にした漫画です。

主人公は世間一般とは若干ズレた感性を持つ貴族の姫・チコと、学生として学ぶ生真面目な貴族の子息・亨の2人。

ある日チコがしたためた文が、風邪のいたずらで偶然亨の元に届きます。その内容に心を打たれ、戯れに女性の振りをして返歌を出した亨。その出来事がきっかけで、顔も見たことのないままの2人は互いに思い合う……というあらすじだけなら恋愛もの少女漫画です。

が。

実際の内容は時代考証ガッチガチで平安文化の常識(怨霊は出るし陰陽術は魔法めいているけど)に則ったまま現代語や英語を使いこなす登場人物が繰り出すドタバタコメディ。

この感じ…何かで…(はっ)これは、【落第忍者乱太郎】のノリ…!!

 

落第忍者乱太郎 60 (あさひコミックス)

落第忍者乱太郎 60 (あさひコミックス)

 

 

また、チコと亨の周囲にいる人たちもまた魅力的です。

チコサイドには、彼女を母親のように愛しつつ雑な性格の乳母・仙河に、厳格かつ人間離れした戦闘力を持ちながら美少年に弱い女房・長山さん、婚活に力を入れる友人の登子、そして文使い美少年ユニット颪(OROSHI)。

亨サイドには、亨と妻を溺愛する父にしっかりした母、チャラ男の友人・実興(サニー)などの個性的な面々。

彼らが織りなすドタバタと、それにかかわる主人公たちのドラマによって「この漫画のメインテーマってなんだっけ」と思わずにはいられない展開も多々。

ただ、主人公2人が基本的に面識がなく、さらに別々の場所で生活しているので「ごくまれにリンクする別々の話」が1つの漫画に納まっているスタイル、という感じが近いかもしれません。

それはそれとして、平安の文化に詳しくなくても面白く、知っているネタが出てきたらそれはそれで一層面白く読め、それでいて2人がついに出会ったときは「よかったねぇ」と素直に思え、実に面白い漫画でした。

ちなみに私的にイチオシ登場人物は「出家のため剃髪しようとして周りに止められた結果、平安時代の女ではレアなショートカット美少女になってしまった内親王識子様」です。