読書記録「最近読んだ漫画201703」

 

異種恋愛物語集 第三集 (ZERO-SUMコミックス)

異種恋愛物語集 第三集 (ZERO-SUMコミックス)

 

人間×異種族のアンソロジー。姫様を守るグリフォンとか使用人とヤモリとか(著者が千歳ヲチコチのキッサン先生だ)悪魔と非常食(少女)とかいろいろと層に届くエピソードが収録されている第3弾。その中で急に出てくる少女×カレーのインパクト。なんでカレーを絡ませようとしたか。そして終始ギャグなのにいい話風に終わらせやがって。なお、わたしのイチオシエピソードは少女×ボディーガードロボットの話。勇者シリーズとか好きだから仕方がないですね?

 

三十代独身OLの映画生活マンガ、アメコミ映画回、サメ映画回、ホラー映画回などが収録されている第3巻。知らない映画の話でも「元ネタについて知らなくても面白い」というこういう系の作品で大切なオモシロポイントが抑えられているので良さ。ただし問題のエヴァ回だけはエヴァを「なんとなくこういう作品だと知ってる」というのが前提の力押しで笑わせに来た話で、力押しで笑わせられました。アニメ化の際はエヴァ回の1発ネタのためだけにネネさんのCVに三石さんをねじ込んでいただきたい。

 

能面女子の花子さん(2) (KCx)

能面女子の花子さん(2) (KCx)

 

 1巻に1巻と記載されていなかったので2巻が出るかどうか謎だったものの無事刊行されておめでとうございます。常に能面を装着しているから花子さんの表情は全く変化しないはずなのに、シーンによって感情が染み出しているように見えるのはマンガ的演出のせいか、はたまた角度によって表情が変わって見える能面のせいか。あと、この展開なら3巻は水着回ですね?水着回でももちろん面はつけっぱなしですね?

 

 ホクサイとのコラボ漫画も収録されてる5巻、ついにリンちゃんの同業者が全員そろったわけですが…燐寸、蝋燭、ランタンときて4人目が燐寸(試供品)とは…。代償の寿命消費がない代わりに妄想がちょっと憐れに叶うというのはむしろデメリットゼロなぶん良いのでは…。なお、お話としてはその1つ前の第29話、注意書きのやつが好きです。 なんかここんところ、救いのあるオチの話が増えてきましたね。

 

瑠璃宮夢幻古物店 : 5 (アクションコミックス)

瑠璃宮夢幻古物店 : 5 (アクションコミックス)

 

 不思議な力を持った古物にまつわる週間ストーリーランドめいた短編オムニバスだと思って読み始めたものの、5巻まで来たらけっこう過去のエピソードのキャラクターが再登場してきたり互いに関わり合ったり、古物店の真央さん側のバックボーンも少し明らかになったり…。しばらくメインだったかなめさんサイドのエピソードがひと段落したので、次巻からまた単発エピソード形式に戻るのでしょうかね?楽しみです。

 

春と盆暗 (アフタヌーンコミックス)

春と盆暗 (アフタヌーンコミックス)

 

 主人公が出会った気になる相手がいろいろあって最終的に仲良くなる話がいくつか収録された短編集。主人公と相手のどちらかが基本的に変人。男女だけじゃないよ。雰囲気がすごく良い。淡々としていて、ふわふわとしていて、月に標識を投げる。

 

北陸とらいあんぐる 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

北陸とらいあんぐる 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

 

 8番らーめんソウルフードである富山県民としては買っておかねばならない一冊。 

 

 飯だ!うちの地域ではドラマ見られない!

 

のみじょし(3)

のみじょし(3)

 

 酒だ!

読書記録「あなたのための物語」

 アンデルセンの宝具ではない。

あなたのための物語

あなたのための物語

 

猛烈な痛みと苦しみの中、未練と生への渇望と現実への恨みが溢れる無様な死を迎えた35歳の女性科学者、サマンサ。

ページを開くと彼女の死から始まり、遡って彼女が死ぬまでの生活が描かれています。

 

舞台は近未来、人工神経分野のナノマシン技術で社会的成功者となった主人公のサマンサは、現在は脳で稼働してニューロンを疑似的に発火させることで他人の経験や知識を簡単に移植するナノマシン技術(以下ITP、Image Transfer Protocol)を研究していました。彼女が主導するチームは100%ITPテキストによって構成された人工人格<<wanna be>>に小説を執筆させることで、ITP使用者が創造性を兼ね備えることができるという証明をしようと試みていました。

そんな中、新種の自己免疫疾患によって余命が半年程度しかないことを宣告されたサマンサは、遺された時間を自らのITPの開発に使おうと決めます。<<wanna be>>実験終了時に一人だけ未解決問題の調査継続を主張した彼女は、チームが解散してがらんとした研究室で、迫りくる死に怯えたり向かい合ったりしつつ、<<wanna be>>と2人だけで研究を継続するのでした。

 

AI、脳内ナノマシン、それを用いた電脳麻薬といったSF感あふれる装置に、ラスボスのような強靭メンタルを持つサマンサでも死への恐怖と時間切れへの焦りから禁忌を犯す展開、「会話ができる赤ん坊」状態からスタートした<<wanna be>>が持ち始める自我と彼なりの「物語」の定義、科学と宗教の対立、着々と病状が悪化して苦しむサマンサ、<<wanna be>>が認識する「死」の概念の変遷などの様々な描写が淡々と展開していきます。

 

<<wanna be>>は小説を執筆し続け、いくつもの作品が作られますが総じて「展開が平坦で盛り上がりに欠ける」作品でした。その点から、未解決問題である「ITP使用者に見られる感覚の平板化」の原因を突き止めるきっかけを見つけるのですが、そういわれるとひょっとしてこの小説は「ITP人格が執筆した小説」という風に見せているのかも…?

 

それにしても、最終的にサマンサは死を受け入れて安らかな気持ちになったものの、作品を読み終わってから冒頭に戻ったらやっぱり人間の尊厳をかなぐり捨てて叫び苦しむ死の間際のサマンサが描かれていたため、現実は厳しいと感じましたね。

読書記録「千歳ヲチコチ」

 

 

漫画単行本は全8巻で完結済みの、平安時代を舞台にした漫画です。

主人公は世間一般とは若干ズレた感性を持つ貴族の姫・チコと、学生として学ぶ生真面目な貴族の子息・亨の2人。

ある日チコがしたためた文が、風邪のいたずらで偶然亨の元に届きます。その内容に心を打たれ、戯れに女性の振りをして返歌を出した亨。その出来事がきっかけで、顔も見たことのないままの2人は互いに思い合う……というあらすじだけなら恋愛もの少女漫画です。

が。

実際の内容は時代考証ガッチガチで平安文化の常識(怨霊は出るし陰陽術は魔法めいているけど)に則ったまま現代語や英語を使いこなす登場人物が繰り出すドタバタコメディ。

この感じ…何かで…(はっ)これは、【落第忍者乱太郎】のノリ…!!

 

落第忍者乱太郎 60 (あさひコミックス)

落第忍者乱太郎 60 (あさひコミックス)

 

 

また、チコと亨の周囲にいる人たちもまた魅力的です。

チコサイドには、彼女を母親のように愛しつつ雑な性格の乳母・仙河に、厳格かつ人間離れした戦闘力を持ちながら美少年に弱い女房・長山さん、婚活に力を入れる友人の登子、そして文使い美少年ユニット颪(OROSHI)。

亨サイドには、亨と妻を溺愛する父にしっかりした母、チャラ男の友人・実興(サニー)などの個性的な面々。

彼らが織りなすドタバタと、それにかかわる主人公たちのドラマによって「この漫画のメインテーマってなんだっけ」と思わずにはいられない展開も多々。

ただ、主人公2人が基本的に面識がなく、さらに別々の場所で生活しているので「ごくまれにリンクする別々の話」が1つの漫画に納まっているスタイル、という感じが近いかもしれません。

それはそれとして、平安の文化に詳しくなくても面白く、知っているネタが出てきたらそれはそれで一層面白く読め、それでいて2人がついに出会ったときは「よかったねぇ」と素直に思え、実に面白い漫画でした。

ちなみに私的にイチオシ登場人物は「出家のため剃髪しようとして周りに止められた結果、平安時代の女ではレアなショートカット美少女になってしまった内親王識子様」です。

読書記録「ハーン・ザ・ラストハンター」

 

 

Twitter上で行われた同時読書会イベントが記憶に新しい、アメリカン・オタク小説集なぞという短編集です。帯の「妖怪!センパイ!そして豆腐!」がパワーあふれているけれども私は電子で購入したので帯はついていないのでした。残念。

 

「ハーン:ザ・ラストハンター」&「ハーン:ザ・デストロイヤー

ラフカディオ・ハーンが妖怪や幽霊を銃や葵の御紋入りダイナマイトなどの物理で退治する時代劇です。番町皿屋敷のお皿カウントは死の宣告。

「エミリー・ウィズ・アンアンドレス センパイポカリプス・ナウ! 」 

数千人に一人の特殊遺伝子を持つなどその他設定盛り盛り女子高生のエミリーがいろんなイケメンセンパイと恋愛的なアレコレしたり協力したり悩んだり吹っ切れたりして巨大ロボット「ジュウ・ニ・ヒトエ」に乗り込んで怪獣を倒す!以上!つよい!

阿弥陀6」

なんかバイオ生物の培養みたいに豆腐を作るスペースコロニー。そこで一人過ごすスタッフが船外活動中に遭遇する事故…ところがそれは人為的なもので、何者かが悪意をもって仕掛けたこと。しかし自分とお手伝いロボしかいないはずのコロニーでいったい誰が?他人の助けが望めない環境でどうすれば!?という宇宙SFですが、宇宙豆腐工場のインパクトと、それが単なる背景じゃなくて物語にしっかり絡んで…いるのが…いや豆腐じゃなくてもよかったのでは…にがり…あとマニ車

(これは時間が合わなくて同時読書会に参加してませんでした)

流鏑馬な! 海原ダンク! 」

バスケが得意な米国人ジェイソンは留学先の日本でバスケ勝負に敗れ、自信を失ってしまいます。ホームステイ先で隣の家の女の子と出会い、何故か彼女の父親からスーパーバスケパワーを引き出されたジェイソンは、彼女のピンチに立ち上がります。地域の有力者の息子を相手に1on1のバスケ勝負!超人スポーツ漫画めいた展開が熱い!

「ジゴク・プリフェクチュア」

 アメリカからのツアーバスが日本の篠山県で現地民の襲撃に遭う。そう、この村は食人族の村だったのです!なんでや!主人公のジョシュアは、現地民に攫われた恋人を助け出すため、そして生きて脱出するために行動を開始します。わけのわからない言葉(方言)を喋る現地民と戦い抜く、血が飛び人体が損壊するスプラッタ・ホラー小説でした。日本って怖い土地ですね。

 「隅田川オレンジライト」&「隅田川ゲイシャナイト」

高級料亭で開催されたとある会社の飲み会。オレンジライトではちょっと不思議な出来事があるだけで、特に盛り上がりもなくノミカイの出来事を描いて終わるのですが、ゲイシャナイトの方では同じ出来事を料亭のゲイシャ側の視点で描かれます。

 「ようこそ!ウィルヘルム」

海外MMOのハードな世界で生まれたNPC(たぶんクラン戦とかで配置される強力な防衛NPC)のウィルヘルムが、PVP、PKなんて存在しないほのぼの(ただし猛毒ワイヴァーンはいる)和製MMOの世界に飛ばされて不自然に露出度の高いケモミミと人間の耳で4つの耳を持つ異形の女マリカ(チュートリアル担当NPC)と出会う、ある意味異世界転生ものです。狩場で整列したりキャラが全員美男美女だったりする和MMOの世界に困惑したり、戦闘スキル全振りの自分の立ち位置に悩むウィルヘルムなどの描写が続きますが、ある日1人の悪質なプレイヤーが起こした事件から物語は大きく盛り上がります。

 MMOだからね。

 

公式サイトから有志がtogetterでまとめた読書会ログへのリンクが貼ってあるので(これもすごい話ですよね)、それぞれの話を読みつつ読書会ログを参照するとライブ感とかあって面白いと思います。

www.chikumashobo.co.jp

 

あと、あとがきを読むとこれはなんか暗に「いいね?」って言われているような気にもなる「SKYPEすげー!」状態ですが、まあ個人的にはどちらでもいいので他の作品も読みたい!ですね。

 

読書記録「灰都ロヅメイグの夜」杉ライカ

ニンジャスレイヤーのほんやくチームとして有名なダイハードテイルズのメンバー、杉ライカ氏によるダークファンタジー作品です。私が読んだのはもともとnoteで有償公開されていたもののkindle版。なので、一部note版限定のコンテンツは読んでいません。

読み始めると地の文が「君」と呼びかけてくるので二人称小説なのかなと思いきや、それは序章のみでそれ以降は三人称。しかもその呼びかけられていた「君」は主人公ではなく、じゃあ世界観説明用の使い捨てモブかと思いきやあとあと出てくる1人の登場人物で、ああライバル的なサブ主人公的なそういうのかなと思ったら…ああっ。

舞台となるのは、濃い霧の中に何層にも重なる構造の建築物がひしめく巨大都市、灰都ロヅメイグ。世界観はファンタジーなのでいわゆる「剣と魔法の世界」ですが、人々にとって「魔法」は空想の産物。

主人公は2人、隻腕剣士グリンザールと、隻眼吟遊詩人ゼウド。彼らは共にクエストをこなす相棒であり互いに信頼しあっているものの、それぞれが腕や眼を失った原因である過去の出来事や目的については語っていない様子。

物語の本編はグリンザールが呪文のセルフ入れ墨で感染症になり、死にかけるところから始まります。グリンザールと、彼を「師匠の仇」として付け狙う剣士たちとの闘い。そこに現れる乱入者。出かけていたゼウドの元に現れる女。魔法。

この本に収録されているエピソードは中編1つと短編が2つ、すべて読んでも2人の目的が達成されたりはしませんが、物語が未完のまま続きが書かれていないという風でもありません。グリンザールとゼウドという2人の長い冒険譚のうち、一部のエピソードをピックアップしてあるという感じ。例えるならそう…スレイヤーズすぺしゃる…あれをダークにした感じ…

個人的に二人称が苦手なので序章はちょっと読みづらかったのですが、それ以降は描写の緻密さも相まって脳内映像化も簡易でした。いやあ面白かった。

ただ、ニンジャスレイヤーを知っていると「死ね!グリンザール死ね!」というセリフで「死亡フラグいただきました!」とか思っちゃうのでアレ。

読書記録「ハーモニー」伊藤計劃

image <?Emotion-in-Text Markup Language:version=1.2:encoding=EMO-590378?>
<!DOCTYPE etml PUBLIC :-//WENC//DTD ETML 1.2 transitional//EN>
<etml:lang=ja>
<body>
伊藤計劃の第2作、ハーモニー<harmony />を読みました。

<story>
 大災渦<ruby>ザ・メイルストロム</ruby>を経験した人類が、人の命を大事にしようとして、ほとんどの病気を消滅させた近未来。
 <comment>
   この大災禍はおそらく、前作「虐殺機関」のラストで発生した事件のことか。
 </comment>
 人体にインストールするナノマシン「WatchMe」による健康管理と医療分子<ruby>メディモル</ruby>の治療行為によって、ほとんど病気になることもない。
 酒もタバコも体に悪いから駆逐され、汚い言葉や行為も抹消され、お互いがお互いを思いやる、やさしさに満ち溢れた世界。

 あるところにそんな世界が嫌いで仕方がなかった女子高生がいた。
 <list:item>
    <i: 霧慧トァン>

   

<i: 御冷ミァハ>

   

<i: 零下堂キアン>
 </list>
 3人はそんな世界への反抗として餓死しようとするが、計画が大人たちに露見して命を救われてしまう。成功したのはミァハだけだった。

 大人になったトァンは、WHO職員として戦地へ行っては健康監視ネットワークの目を盗んで喫煙・飲酒をすることでささやかな反抗を続ける生活を送っていた。
 そんなある日、日本に戻ったトァンがキアンと共に食事をしていると、世界各地で数千人が同時刻に自殺を試みる事件が発生する。

 事件を追うトァンは、そこに死んだはずのミァハの影を見る。
</story>
<impression>

 みなが全体の調和を重んじてお互いがお互いを思いやる世界で、「自意識」や「意思」にどれほどの意味があるのか。
 自分を自分たらしめているものはなんなのか。
 自我がなければ、悩むこともなく幸福に生きていけるのではないか。

 そういう真面目な流れで涼宮ハルヒネタとか入れてくるのやめよう?不意打ちやで。
 そして特に女子高生時代のシーンは女の子同士でキャッキャうふふしている感がつよい。これは百合小説だったのか。
 <comment>一時期はコミック百合姫でコミカライズ連載が予定されていたとか…</comment>

 前作の虐殺機関から世界観はほんのりつながっているものの、読んでたら世界の過去がちょっとわかる程度なので読んでなくても問題なし。

 <spoiler>
   序盤の描写から、地域によってはWatchMeをインストールしていない、していてもサーバーと繋がっていないようなひとたちも結構いるようですが、
   ラストシーンのあと、WatchMe使用者と不使用者が接触するとどうなるのか、とか想像できていいですね。
 </spoiler>
</impression>

なお、この作品は全体がETML 1.2という架空のマークアップ言語で書かれています。
主に
<anger>怒り</anger>
<suprise>驚き</suprise>
<hopelessness>絶望</hopelessness>
といった感情を表すタグが多いです。
エピローグまで読むと、なんでそんな書き方がされていたのか、なんとなくわかります。

そしてこの記事のタグは基本的にでたらめです。
ETMLリファレンスが見当たらないので仕方がない。
</body>
</etml>

読書記録「虐殺器官」伊藤計劃

デビューして2年で夭折した作家、伊藤計劃のデビュー作にして代表作。
ということを全く知らずに購入して半年くらい積んでいた、虐殺器官を読みました。

近未来。サラエボで発生した核爆弾テロによって世界中で戦争・テロが激化した結果、、アメリカを始めとする先進諸国は厳格な個人情報管理体制を構築しテロの脅威を一掃することに成功した。しかしその一方、後進国では内戦と民族対立により虐殺が旧毛木に増加していた。それに対してアメリカは特殊部隊を創設し、各国の情報収集と戦争犯罪人の暗殺を行うようになった。
その特殊部隊に所属するクラヴィス・シェパードは、各国の虐殺に関わっていると目される謎の男、ジョン・ポールを追跡する任務を負う。

人工筋肉や光学迷彩、痛覚遮断などの技術が普及した近未来。イントルード・ポッドやらフライングシーウィードやらの横文字なルビがふられた漢字やら、知ろうと思えばすべてのものについて生産者まで辿ることができるほどの情報管理社会など、サイバーな要素があれやこれやと出てこれども、内容は全編クラヴィスの1人称ということもあってかシンプルで非常に読みやすかったです。
登場人物も最低限、主人公と同チームの3人、仇敵ジョンとヒロイン?のルツィアがわかればいいですし。

ラヴィスの背負う罪や、ルツィアに対する執着、謎に満ちたジョンの目的と虐殺を扇動する方法など、あまり長くない中に濃度の濃い話が満ちていました。

ラストはなんとなく予想はつきましたが、ある意味では夢見ていた世界を現実に持って来ることに成功したのかな、という。

ところで、氏の作品としてもうひとつ有名な「ハーモニー」ですが、舞台は虐殺器官のn年後というらしいですね。そっちも読むのが楽しみです。(積んでる)

ちなみにこの作品のwikipediaを見ると、「ストーリー」の項目に最初から最後まで内容を要約した文章が書いてあります。あらすじどころじゃなく完全に要約。本編読まなくても既読者の会話に入っていけるレベル。すごい。