読書記録「BREAK-AGE EX イマジネーション・ブルー」遠野 ひろみ

私の大好きなBREAK-AGEシリーズのノベライズ外伝です。
私は漫画版こそ当時から読んで、設定資料集すら買いましたがノベライズはノータッチでした。

物語は、”BREAK-AGE”の主軸そのまま、「通信対戦ゲーム『デンジャープラネット(DP)』を通しての、ある若者たちの青春」です。

主人公、堺菊太郎は、かつては飛行機乗りだった祖父の影響で大空に憧れる少年でしたが、ゲーム好きが祟ってド近眼になってしまい、20歳になるころにはパイロットのすっかり夢を諦めていました。
その代わり彼は「DP」の世界で優秀な戦闘機乗りとなり、2人の弟を引き連れて連日ゲームセンターに通っていました。
そんなある日、ロングカノンを装備した謎のVPの手により3兄弟はあっという間に撃墜されてしまいます。
それが菊太郎と、そのVPのパイロットである恭子との出会いでした。


「謎のVPに負けた主人公が、気の強い相手ヒロイン(年上)に再戦を挑み、なんだかんだでパートナーになる」のは本編と同じ流れですし、実際境遇の近い本編主人公カップルはゲスト的にちょっぴり登場します。
ヒロインの機体が「高機動で位置取りして遠距離砲撃」っていうのも、本編の九郎に近いコンセプトのような気がしますし。
しかしこの話、本編のように企業側の裏のゴタゴタに巻き込まれたり、ボトルシップトル―パーズのように悩んだりしません。
主人公もヒロインも考えは同じ、「負けた相手に次こそ勝つ」。
割と本編をシンプル・コンパクトにした感じの話、という印象を受けました。

DPは実際の街のデータを使用したステージなんてものもあるんですね…ほんとすごいゲームだ。

あとですね、「恭子さんが良い」ということが言いたいんです私は。
社会人としてしっかりしてるのも良い…
泥酔して酒瓶を並べ始めたり空き缶を積み始めたりするのも良い…
いっしょに酒飲みたい…
恭子さんの下で働きたい…


ちなみにこれ、kindle版が固定レイアウトなんですね。
通りでフォントサイズが変更できなかったわけですわ。
その点はシリーズの他作品「ムーンゲッター」でもそうみたいです。

読書記録「やおい君の日常的でない生活」魔夜峰央

BL本ではありません。
BL要素はあります。

例の「翔んで埼玉」も収録されている、魔夜峰央の作品集です。


収録作品は3つ。

やおい君の日常(的でない)生活
宇宙からやってきた謎の赤ん坊は、ちょっと抜けてる少年に育つ。
ある日、彼は様子がおかしい妹(養父母の実子)を心配し、原因を調査する。
結果その理由を推測するに至った彼が、これはどうにかせねばと悩んだ結果宇宙のアレであーしてあーなって、アッーってなって、おしまい。

・時の流れに
茨城県民は東京都民に田舎者扱いされるが、未来では茨城県民が東京都民を田舎者扱いしていた。
タイムスリップしたミコは、転移先のダンディなおじさまに一目ぼれし、彼を悩ます事件の解決に協力したいと考えるようになる。

・翔んで埼玉
都会の東京と、ド田舎である埼玉県を舞台にして都民らから差別される埼玉県民が話題の例のアレ。
ちなみに茨城は埼玉を凌駕する田舎であり秘境である。
なお、作者の出身である新潟は裏日本一の都会であり名誉東京。


この中では「時の流れに」はわりと普通にSFしてます。話もちゃんと落ちてます。
やおい君~」は面白いんですけど、わりと放り投げて終わってます。
あとがきを見るとシリーズ化しようと思ってたけど…ってあるのでなんか考えてたのかもしれませんが、まぁこれはこれで面白いです。うるうるうる。
「翔んで埼玉」は有名ですね。
3話まで収録されていて、「俺たちの戦いはこれからだ!」的に終わってます。
どうやら作者が埼玉か横浜へ引っ越したので「外から埼玉の悪口を言ったら本当に悪口ととられかねない」という理由でストップしたようです。


ちなみに魔夜先生は新潟出身なので新潟市の「マンガの家」にパタリロ!コーナーがあったりします。
飛び出すクックロビンなパタリロもいますよ。まめちしき。

読書記録「ひきだしにテラリウム」九井諒子

またしても九井諒子の短編集。

竜の学校は山の上竜のかわいい七つの子と異なるのは、今回はひとつひとつのエピソードが非常に短いショートショートとなっていること。
短いものは2ページで終わってしまい、まるで星新一を読んでいるよう。
そのぶん収録エピソードの数が多く、これまで以上にサクサク読めます。

短いものの内容はしっかりしており、外国の教訓話めいた「湖底の春」、ドラえもんが元ネタらしい「恋人カタログ」やギャグに走る「パラドックス殺人事件」、ほかにも「竜の逆鱗」は同作者のダンジョン飯に通じる空想生物を食べる話。
淡々と不思議が続く「記号を食べる」、わけのわからない食材なのになぜかフードマンガの雰囲気が漂っています。

また、4ページまるまる猫がメイクするだけの「かわいくなりたい」など、面白い話・不思議な話・ひょっと怖い話などなど、独立した30エピソード程度が収録されています。
(ただし、最後の「未来人」だけは別のエピソードを踏まえてじゃないと意味が分かりませんが)

作者はどうしてこうもアイデアがポンポン湧くのか、不思議でなりません。


ちなみに、表題にもなっている「ひきだし」は3ページで完結します。
うーん、ショートショート

読書記録「九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子」九井諒子

表題の通り、7つのエピソードが収録されている短編集です。

竜の学校は山の上と同様、ひとつひとつが安定したおもしろさ。(たしかこっちが後発のはず)

・竜の小搭
戦争中の海国と山国だが、国境にある関所の塔の上に竜が巣を作ってしまったためやむなく休戦状態。
商隊も襲われるため塩不足となった山国で、主人公である少女ユルカは野菜を求めて海国から来た兵士サナンと出会う。どうやら1人程度なら竜を刺激しないらしい。
物資の交換を条件に捕虜を逃れ、両国を往復するようになったサナン。彼から聞く海国や竜の子育ての様子に、だんだんと心を開いていくユルカ。
そのうち、両国の休戦を終える「竜の巣立ち」の日が近づいてくる。

・人魚禁猟区
人間に似た見た目だが言葉は通じない「人魚」という動物が存在する世界。
主人公の準は道路沿いに倒れていた人魚を救助するが、そのせいで友人の浜と険悪になる。
後日、同じ人魚を見かけた準は、その人魚がなぜか山の上の学校を目指していることを知り、協力することに。

・わたしのかみさま
中学受験を控えるが成績が上がらない雪枝は、再開発により住処を失くした山の神と出会い、保護することに。

・狼は嘘をつかない
前半は「狼男症候群」という病気の子を持った母親の育児エッセイコミック。
後半は、成長して大学生になったが、病気のせいでまともに大学生活を送れない子の苦悩を描く。 竜の学校~でよく見られた「ファンタジーが融合した現実」のお話。

・金なし白祿
都で一番の絵師である高川百録。
彼の描く生物はすべて片目が描かれていないが、これは両目を描くと生命をもって絵から飛び出してしまうからである。
詐欺にあい一文無しになってしまった彼は、過去に描いた珍しい動物の絵に目を入れて実体化させ、それを捕まえて売ろうと考える。
捕縛担当者として自分の武者絵の贋作に目を入れるが、その贋作がヘタクソだったために武者は半分紙のまま生まれてしまう。

・子がかわいいと竜が鳴く
父王の病を治すために竜の鱗を得ようとするシュン王子と、その道案内をすることになったヨウという女。
この話は特設サイトで全編が読めます。

・犬谷家の人々
一族全員が超能力を使える犬谷家。
双子の姉妹が超能力に目覚めたため、家族でパーティーを開くことにするが、そこに父が大学生探偵の銅田一耕助を連れてくる。
探偵が大家族を訪問し、雰囲気的にあまり歓迎されていないという状況で起きるのはもちろん、殺人事件…?


いい話だったり、いい話だったのになーだったり、相変わらずのおもしろさ。
少々ハードな展開があっても、それでいて後味悪いものは1つもない。
いい本でした。

読書記録「やさしいからだ」安永知澄

全3巻で完結済み。
年齢も性別も様々な人々を主人公とする、オムニバスストーリーです。

ちょっと不思議な話から、現実的な話まで。
不思議な話も、これは多感な主人公の空想・妄想なのかもしれない(最終話を除く)程度の不思議。

笑顔の代わりにできものができる少女に始まり、「嫌な臭い」を感じる少女や、少女時代に嫌な記憶を持つおばさん、かつてのクラスメイトの日記を見つけるおじさん、子供のころから「自分を呼ぶ声」が聞こえる女性など。
各話の主人公は、1つ前の話で脇役で登場する人物(気付いてないだけかもしれないけれど、そうでない場合もある)なので、あのひとがこんな…という感覚に陥ることもあります。
ただし内容も多くは語られないため、キャラクターの所作や背景に注意しないと、何が言いたいのか全然わからない話も多いです。
正直、ネットで検索してやっと「そういうことか」とわかった話もあり…。

「やさしいからだ」の主人公はほぼみんな救われます。
それは本人や周囲の人がやさしいからだと思います。
ただし読者にはあまりやさしくなかった…。
キャラクターの背景などを推測して読むと面白いのですけどね。
SF小説を読んでいる気分になります。

ニンジャスレイヤー2015エピソード投票

◆この内容は、ニンジャスレイヤー2015年dエピソード投票において140文字に納まりきらなかったコメントをつらつら書き連ねたものです。◆

参考
【 12月24日〜31日まで】ニンジャスレイヤー2015エピソード投票受付開始! - ニンジャスレイヤー公式ファンサイト:ネオサイタマ電脳IRC空間

以下投票したエピソードについて一言…

①「フェアウェル・マイ・シャドウ」
物理書籍から忍殺に入ってそのまま書籍で追っていたため、連載は立ち読み程度に楽しんでいた自分が更新にかじりつくきっかけになったエピソード。
自分の役割を全うするために全力で駆け抜けるユンコ。
自我を取り戻し復活、反旗を翻すシャドウウィーヴことレイジ。
モータルながら決死の覚悟でニンジャを撃退するマッチ。
そしてユンコとレイジのボーイミーツガール!
進め、進め、いざ進め!青春は暴走だ!
終盤、並行していたニチョーム・ウォーとの同時更新、エピソード同士の螺旋めいた絡み合い!
あのTwitter連載ならではの演出を体験した私はひとつ心配になりました。
「これ、どうやって書籍化するんだろう」

②「フォロウ・ザ・コールド・ヒート・シマーズ
レディース!エン!ジェントルメン!エン、ジョッチャン!ボウチャン!
クールなやつらが集まって、過酷なレースでヒートする!
どの選手も司会者も!揃いも揃ってかっこいい!
我らが殺戮者もデッドムーンに同乗してレースに参加!
マシンはもちろん武装霊柩車、お前の死体も載せられる!ネズミハヤイDⅢ!
途中に現れる謎の現象…まさかこれはニンジャの仕業!?
我らが殺戮者の手により問題は解決、行方不明の選手もレースに復帰!
そして始まる最後のデッドヒート!ええいニンジャのイクサよりもレースを映せ!今のトップは誰だ!
なんだって、万年最下位のあいつらがァ!?

③「ザ・ドランクン・アンド・ストレイド」
事件の調査のため酒場にやってきたフジキドは、そこでレッドハッグと出会う。
フジキドは彼女にほぼ無理矢理酒を飲まされるが、なんとか情報を入手。
そして手掛かりを求め…るが…レッドハッグのペースに引き込まれ…
だんだんと酔いが回った殺戮者は、口調はいつも通りなのに何かおかしい。
情報収集のためにダンスを踊り、瓦を割る。
目的のため大真面目なのに、やってることは泥酔嘔吐に二日酔い。
ハードボイルドに始まったのに、どうしてこうなった…?



以上3点に私は投票しました!ウィーピピー!

読書記録「白い街の夜たち」市川ラク

トルコ料理ベリーダンスに文化。そしてイスラム
エキゾチックな雰囲気の青春マンガ。
全3巻で完結済みです。

服飾専門学校に通う文子は、身に着けていたアクセサリがきっかけでトルコ料理店でアルバイトすることに。
その店で知るトルコ料理やトルコの文化、先輩アルバイターのざくろによるミステリアスなベリーダンス
それらは悩める文子に光を与え、やがて道を示します。

店長のホジャさんは庶民的な店を経営するため、本格志向のトルコ料理レストランを経営する妻とは別居中。
同僚のざくろは、ベリーダンスでより高みへ上る方法を求めます。
クラスメートの男子や悪友との関係。
自殺未遂をした地元の幼馴染。
そして文子が出会うアッラーの教え。
悩める彼女はイスラムに救いを求めるのか、それとも…。

連載中にISILによる事件が発生したせいか、ちょっとその辺に触れるセリフがあったり。
作中に出てくるトルコ料理や文化の知識やトリビア。同じくベリーダンスの歴史…ベリーダンスってインド文化だと思ってた私もびっくり(地域のカレー店でやってるから)


アルバイトを通じて世界が広がり、精神的に成長した文子が最終的に今後の進路を決めるまでの青春譚。
トルコの入門書としても使える…かも?

あとグルメマンガってわけでもないのにトルコ料理が美味しそうで美味しそうで。

ピーマンの肉詰めが食べたい。