読書記録「ひきだしにテラリウム」九井諒子

またしても九井諒子の短編集。

竜の学校は山の上竜のかわいい七つの子と異なるのは、今回はひとつひとつのエピソードが非常に短いショートショートとなっていること。
短いものは2ページで終わってしまい、まるで星新一を読んでいるよう。
そのぶん収録エピソードの数が多く、これまで以上にサクサク読めます。

短いものの内容はしっかりしており、外国の教訓話めいた「湖底の春」、ドラえもんが元ネタらしい「恋人カタログ」やギャグに走る「パラドックス殺人事件」、ほかにも「竜の逆鱗」は同作者のダンジョン飯に通じる空想生物を食べる話。
淡々と不思議が続く「記号を食べる」、わけのわからない食材なのになぜかフードマンガの雰囲気が漂っています。

また、4ページまるまる猫がメイクするだけの「かわいくなりたい」など、面白い話・不思議な話・ひょっと怖い話などなど、独立した30エピソード程度が収録されています。
(ただし、最後の「未来人」だけは別のエピソードを踏まえてじゃないと意味が分かりませんが)

作者はどうしてこうもアイデアがポンポン湧くのか、不思議でなりません。


ちなみに、表題にもなっている「ひきだし」は3ページで完結します。
うーん、ショートショート

読書記録「九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子」九井諒子

表題の通り、7つのエピソードが収録されている短編集です。

竜の学校は山の上と同様、ひとつひとつが安定したおもしろさ。(たしかこっちが後発のはず)

・竜の小搭
戦争中の海国と山国だが、国境にある関所の塔の上に竜が巣を作ってしまったためやむなく休戦状態。
商隊も襲われるため塩不足となった山国で、主人公である少女ユルカは野菜を求めて海国から来た兵士サナンと出会う。どうやら1人程度なら竜を刺激しないらしい。
物資の交換を条件に捕虜を逃れ、両国を往復するようになったサナン。彼から聞く海国や竜の子育ての様子に、だんだんと心を開いていくユルカ。
そのうち、両国の休戦を終える「竜の巣立ち」の日が近づいてくる。

・人魚禁猟区
人間に似た見た目だが言葉は通じない「人魚」という動物が存在する世界。
主人公の準は道路沿いに倒れていた人魚を救助するが、そのせいで友人の浜と険悪になる。
後日、同じ人魚を見かけた準は、その人魚がなぜか山の上の学校を目指していることを知り、協力することに。

・わたしのかみさま
中学受験を控えるが成績が上がらない雪枝は、再開発により住処を失くした山の神と出会い、保護することに。

・狼は嘘をつかない
前半は「狼男症候群」という病気の子を持った母親の育児エッセイコミック。
後半は、成長して大学生になったが、病気のせいでまともに大学生活を送れない子の苦悩を描く。 竜の学校~でよく見られた「ファンタジーが融合した現実」のお話。

・金なし白祿
都で一番の絵師である高川百録。
彼の描く生物はすべて片目が描かれていないが、これは両目を描くと生命をもって絵から飛び出してしまうからである。
詐欺にあい一文無しになってしまった彼は、過去に描いた珍しい動物の絵に目を入れて実体化させ、それを捕まえて売ろうと考える。
捕縛担当者として自分の武者絵の贋作に目を入れるが、その贋作がヘタクソだったために武者は半分紙のまま生まれてしまう。

・子がかわいいと竜が鳴く
父王の病を治すために竜の鱗を得ようとするシュン王子と、その道案内をすることになったヨウという女。
この話は特設サイトで全編が読めます。

・犬谷家の人々
一族全員が超能力を使える犬谷家。
双子の姉妹が超能力に目覚めたため、家族でパーティーを開くことにするが、そこに父が大学生探偵の銅田一耕助を連れてくる。
探偵が大家族を訪問し、雰囲気的にあまり歓迎されていないという状況で起きるのはもちろん、殺人事件…?


いい話だったり、いい話だったのになーだったり、相変わらずのおもしろさ。
少々ハードな展開があっても、それでいて後味悪いものは1つもない。
いい本でした。

読書記録「やさしいからだ」安永知澄

全3巻で完結済み。
年齢も性別も様々な人々を主人公とする、オムニバスストーリーです。

ちょっと不思議な話から、現実的な話まで。
不思議な話も、これは多感な主人公の空想・妄想なのかもしれない(最終話を除く)程度の不思議。

笑顔の代わりにできものができる少女に始まり、「嫌な臭い」を感じる少女や、少女時代に嫌な記憶を持つおばさん、かつてのクラスメイトの日記を見つけるおじさん、子供のころから「自分を呼ぶ声」が聞こえる女性など。
各話の主人公は、1つ前の話で脇役で登場する人物(気付いてないだけかもしれないけれど、そうでない場合もある)なので、あのひとがこんな…という感覚に陥ることもあります。
ただし内容も多くは語られないため、キャラクターの所作や背景に注意しないと、何が言いたいのか全然わからない話も多いです。
正直、ネットで検索してやっと「そういうことか」とわかった話もあり…。

「やさしいからだ」の主人公はほぼみんな救われます。
それは本人や周囲の人がやさしいからだと思います。
ただし読者にはあまりやさしくなかった…。
キャラクターの背景などを推測して読むと面白いのですけどね。
SF小説を読んでいる気分になります。

ニンジャスレイヤー2015エピソード投票

◆この内容は、ニンジャスレイヤー2015年dエピソード投票において140文字に納まりきらなかったコメントをつらつら書き連ねたものです。◆

参考
【 12月24日〜31日まで】ニンジャスレイヤー2015エピソード投票受付開始! - ニンジャスレイヤー公式ファンサイト:ネオサイタマ電脳IRC空間

以下投票したエピソードについて一言…

①「フェアウェル・マイ・シャドウ」
物理書籍から忍殺に入ってそのまま書籍で追っていたため、連載は立ち読み程度に楽しんでいた自分が更新にかじりつくきっかけになったエピソード。
自分の役割を全うするために全力で駆け抜けるユンコ。
自我を取り戻し復活、反旗を翻すシャドウウィーヴことレイジ。
モータルながら決死の覚悟でニンジャを撃退するマッチ。
そしてユンコとレイジのボーイミーツガール!
進め、進め、いざ進め!青春は暴走だ!
終盤、並行していたニチョーム・ウォーとの同時更新、エピソード同士の螺旋めいた絡み合い!
あのTwitter連載ならではの演出を体験した私はひとつ心配になりました。
「これ、どうやって書籍化するんだろう」

②「フォロウ・ザ・コールド・ヒート・シマーズ
レディース!エン!ジェントルメン!エン、ジョッチャン!ボウチャン!
クールなやつらが集まって、過酷なレースでヒートする!
どの選手も司会者も!揃いも揃ってかっこいい!
我らが殺戮者もデッドムーンに同乗してレースに参加!
マシンはもちろん武装霊柩車、お前の死体も載せられる!ネズミハヤイDⅢ!
途中に現れる謎の現象…まさかこれはニンジャの仕業!?
我らが殺戮者の手により問題は解決、行方不明の選手もレースに復帰!
そして始まる最後のデッドヒート!ええいニンジャのイクサよりもレースを映せ!今のトップは誰だ!
なんだって、万年最下位のあいつらがァ!?

③「ザ・ドランクン・アンド・ストレイド」
事件の調査のため酒場にやってきたフジキドは、そこでレッドハッグと出会う。
フジキドは彼女にほぼ無理矢理酒を飲まされるが、なんとか情報を入手。
そして手掛かりを求め…るが…レッドハッグのペースに引き込まれ…
だんだんと酔いが回った殺戮者は、口調はいつも通りなのに何かおかしい。
情報収集のためにダンスを踊り、瓦を割る。
目的のため大真面目なのに、やってることは泥酔嘔吐に二日酔い。
ハードボイルドに始まったのに、どうしてこうなった…?



以上3点に私は投票しました!ウィーピピー!

読書記録「白い街の夜たち」市川ラク

トルコ料理ベリーダンスに文化。そしてイスラム
エキゾチックな雰囲気の青春マンガ。
全3巻で完結済みです。

服飾専門学校に通う文子は、身に着けていたアクセサリがきっかけでトルコ料理店でアルバイトすることに。
その店で知るトルコ料理やトルコの文化、先輩アルバイターのざくろによるミステリアスなベリーダンス
それらは悩める文子に光を与え、やがて道を示します。

店長のホジャさんは庶民的な店を経営するため、本格志向のトルコ料理レストランを経営する妻とは別居中。
同僚のざくろは、ベリーダンスでより高みへ上る方法を求めます。
クラスメートの男子や悪友との関係。
自殺未遂をした地元の幼馴染。
そして文子が出会うアッラーの教え。
悩める彼女はイスラムに救いを求めるのか、それとも…。

連載中にISILによる事件が発生したせいか、ちょっとその辺に触れるセリフがあったり。
作中に出てくるトルコ料理や文化の知識やトリビア。同じくベリーダンスの歴史…ベリーダンスってインド文化だと思ってた私もびっくり(地域のカレー店でやってるから)


アルバイトを通じて世界が広がり、精神的に成長した文子が最終的に今後の進路を決めるまでの青春譚。
トルコの入門書としても使える…かも?

あとグルメマンガってわけでもないのにトルコ料理が美味しそうで美味しそうで。

ピーマンの肉詰めが食べたい。

読書記録「ニンジャスレイヤー 死神の帰還 」

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ドーモ、皆さん。
私は実際ヘッズのため、過去に出版されたニンジャスレイヤーの物理書籍はすべて所有している。
過去のものについてもすべて記録してもいいくらいの熱量はあるのだが、そうすると私があほなのではないか?という疑惑がもたれたり、わざわざアクセスしてくれたひとが帰ってパラッパラッパーをしてしまうため、このような第3部2巻というものを記録することにした。

そんなわけでニンジャスレイヤーです。
まず前提として、既にニンジャスレイヤーはアニメにもなった第一部「ネオサイタマ炎上」編(全4巻)と第二部「キョート殺伐都市」編(全8巻)が刊行済みです。
そして現在刊行中なのは第三部「不滅のニンジャソウル」編であり、この”死神の帰還”はその第2巻に当たります。


さて、この"死神の帰還"にも複数のエピソードが収録されています。

表題作である「フー・キルド・ニンジャスレイヤー?」は時系列的には第三部のプロローグにあたり(2巻でプロローグナンデ?とお思いかもしれませんがニンジャスレイヤーにはよくある)、第2部での闘いの後、燃え尽き症候群となってしまった主人公フジキド。かつての仲間たちが彼を気にかける中、夜な夜なニンジャ狩りを行う”偽”ニンジャスレイヤーが出現し…。
過去の仲間や関係者が続々登場する上に、展開も熱い中編作品。まさに「戦士の再起動」といった感じで、まるで劇場版「エピソード・ゼロ」といった感じです。

また、ある意味表題作(帰還的な意味で)の「ノーホーマー、ノーサヴァイヴ」はまさかまさかの野球回。アニメのラジオでも告知時に「まさか」という声の出た野球回。アッハイ、アウトにならないように点を取るのが野球のコツです。


そしてもう一つ収録されている中編作品が「レプリカ・ミッシング・リンク」。
主人公は大学生のユンコ・スズキ。
何者かによってエンジニアである父親を殺された彼女は、悪徳警察官の手により父親殺しの犯人とされ、逮捕されそうに。
何もわからないまま逃げた先のクラブで、自分が既に死んでいるはずだと聞かされるユンコ。
ならば彼女は何者なのか。
父親は彼女に何をしたのか。
スズキ・マトリックス理論とは何なのか。
自我。人工知能。記憶。マグロ。
なんということでしょう。ニンジャスレイヤーがこんなにもサイバーパンクしている。

で…結局、マグロの正体は何者だったんですかね…?


「ニンジャスレイヤー」は大長編でありつつ、個々のエピソードはほぼ独立しています。
そのため、作者の筆もこなれて表現力の高まった第3部から読み始めてもあまり問題はありません。
さあ、ぜひあなたも元気なニンジャライフを。


なお私は偶然ここで本の読んだ記録を記述しているのであり、原作者、ほんやくチーム、エンターブレイン社などとは一切関係がありません。

読書記録「現代魔女図鑑(3)」伊咲 ウタ

4巻が先日発売されました現代魔女図鑑の3巻です。

基本的にオムニバスなこの漫画ですが、1巻に出てきた魔女部の面々が再登場&再主役回を持ったり、過去の主役が脇役や背景で出てきたりと「同じ街を舞台にしている」感じがより一層濃くなっています。
おまけ漫画で補足されるまで気付かなかったキャラもいますが…あんた1話の魔女だったのかよ!

表紙は「或る魔女と家族」の主役一家。
一般人の洋一と、彼の妻であり魔女のキワ。キワは出産時に死んでしまうが、旦那にだけ知覚できる霊体として残り続けている。
キワは明るく振舞ってこそいるが、子供を”見守る”ことしかできないことに思うところがあるもよう。
一方この生活も悪くないと思っている洋一だが、妻が育児に口しか出せないためほぼシングルファザー状態。
ある日洋一が体調を崩してしまい病院に行くことにするが、キワには子守ができないため子供を連れて行かねばならず…


その他、幼馴染に対する魔女疑惑が晴れずモヤモヤし続ける少年の「或る少女は魔女?」、上手いことやり過ごしたくて四苦八苦する「或る魔女のお見合い」などが収録されています。


もう出てるけど、4巻も楽しみです(掲載誌読んでるから覚えてる話もあるだろうけど)。